2002.08 MCRJ ニュースレターより
MCRマガジン2002年7月号
元ワークス&競技車両レジスター部門

ロバート・ヤング

アビンドン・モディファイド・ミニ
今月は新しいレジスターメンバーである、北アイルランドはバリーメナのダーモット・シンプソンを迎えたい。ダーモットは自分が所有するMK3クーパーSの、大変興味深い詳細について手紙をよこしてくれた。このクーパーSはアビンドンが、前オーナーであるウォルター・トンプソンのために用意した車両そのものであった。

ダーモットのワークス・ミニに対する興味は、国際ラリー競技「サーキット・オブ・アイルランド」に起因している。1960年代を通じて、彼はしばしば地元バリーメナのガラハー・タバコ工場(このラリーのスポンサーでもあった)における競技車両のスタートシーンを見続けてきた。フォード・エスコートを駆るロジャー・クラークや地元の英雄ビリー・コールマンが参加していたというにもかかわらず、彼の想像をかき立てたのはホプカークのワークス・ミニであった。我々の多くと同じように、ワークス・ミニを所有しようと決意するのはこういった青春期の衝撃によることが多いものだ。私の場合はと言うと、当時ロンドンに住んでいて、ロンドン空港のエクセルシー・ホテルでのRACラリーのスタートがそれだった。英国の森を征服する冒険性と、スタート台を駆け下りていくミニの物凄いギヤボックスのサウンド。当時のRACはまさに本物のイベントだった!

レジストレーションナンバー「CIJ 3800」のダーモットのクーパーSは、ダウントンのディーラーでもあった北アイルランドの「Kanes」を通じて発注された。この車両は事実、生産ラインから保護用のワックス・コートを付けたまま、アビンドンにダイレクトに運ばれてきたもので、そこで完全グループ2ラリー仕様として準備された。作業は多岐に亘った。ボディ各部の強化、全ての配管類の内部取り回し化、分割されたダッシュボードと計器類、そしてルーカス社による完全な配線の引き直し作業も含まれている。さらにこの車両には、リヤのアンチ・ロールバーとともに競技用ハイドロ、その他我々にもなじみの多い典型的なワークス・パーツが付加されたのである。手を加えられずに残された部分は、エンジンとギヤボックスだけであった。これにはちゃんとした理由があったのだ。

「Kanes」のダウントン担当メカニックのジム・マッククレメンツは、オーナーから車両を回収して、アイリッシュ海を渡って戻り、エンジンとギヤボックスを完全なダウントン流に仕立て上げたのだ。エンジンは完全に一から組み直されて1293ccまで拡大され、45口径のウェーバー・キャブとロングタイプの中央分岐マニフォールド、特製のストレートカット・クロスレシオ・ギヤボックス、そしてリミテッド・スリップデフが組み込まれた。ジムはダウントンの徒弟ロバート・ディクソンの協力を得て、首尾よく作業をこなした。ロバートは事実、その日以来今日までこの車両のメンテを継続し、現在はキリンシーの彼のガレージにて行なっている。

この車両は1971年に製作されて以来、エスコート(フォード)の優勢的支配の中で、国際ラリー競技においては全く振るわなかった。写真にあるように、多数のサーキット・オブ・アイルランドにおいて戦った。ダーモットは1976年にこの車両を買い取り、以来いくつかのスプリントに参戦したものの、1978年のカーキスタウン・ラリー以後は、主要な競技には参加していない。車両は現在もKanesに残された当時そのままの状態を維持しており、前オーナーによってホイヤー時計が取り去られた以外は、全体的に完全なオリジナルである。ダーモットは、今年7月にこの車両で南アイルランドまで南下して、我々の何人かもフュー・ウィリーに参加する、サーキット・オブ・アイルランドのステージをいくつか回る走行会に顔を見せる約束をしてくれている。実現すると良いのだが。アビンドンの歴史の一つがアイルランドの道を駆け巡るのを眺めるのは、きっと素晴らしい光景に違いない。

8ポート・シリンダーヘッド
アビンドンの歴史の一つと言うと、私はロンドン=ブライトン・ミニ・ランの会場で素晴らしいウェスレイク製鋳造8ポートヘッド(ウェーバー・ツイン付き)が売りに出ているのを見つけた。クリス・テナントが、程度の良い希少なAEG-163ヘッドや何基かの12G-940と一緒に売り出していたのだが、どれも大変お買い得な価格であった。アートとしてのこれらワークス8ポートの一つを所有したからといって充分に幸わせな訳ではないが、これらを間近に見るのはやはり良いものだ。しかしこの風変わりなヘッドを装着して走らせようと望むなら、あなたは深みにはまることだろう。というのはこのヘッド1個で、程度の良い中古のローバー・クーパーが買えてしまうのだ。

これらのヘッドの装着もまた、ボルトで直付けという訳にはいかない。ついでに書いておくと、このヘッドの正規のパーツナンバーは鋳鉄製の場合、C-AEG612。もしあなたが偶然にもアルミバージョンを持っていたとしたら、こいつはC-AEG346だ。
このクロスフロータイプのヘッドは、一風変わった燃焼室の形状を持っている。キドニーシェイプ(腎臓のかたち)を持つAシリーズの燃焼室形状に慣れ親しんだ我々には、このヘッドは随分違った印象を与える。インレット・バルブは言うまでもなく大きく、37.8o径である。AEG163ヘッドの場合、インレット・バルブ径は35.56oであり、12G940ヘッドの場合はそれより少し小さい33.34o径である。エグゾースト側はより小径の30oであり、163や940ヘッドの29.37oに非常に近い。このヘッドはまた非常に高い圧縮比を持っており、夫々の燃焼室容積はたったの14ccしかない。これにより圧縮比は12.5:1を超える結果となっている。どんな燃料を使おうが、今日の無鉛低オクタンガス時代にはどんなものかと思う。
アルミ製ヘッドの方はというと、インレット・バルブの大型化とは無縁のように思える。すなわちAEG163ヘッドと全く同じサイズのものが使用されているのだ。しかしながら、エグゾースト側は若干太めの30.86oを使っている。何故こういう違いがあるのかは、私にもまるで分からない。またプラグに関しては10oスパーク・プラグを使わなければならない。

8ポートヘッドを見つけたのなら、同時にそれに見合ったカムシャフトも必要だ。通常のシリンダーヘッドとはバルブ・シーケンスが異なるため、普段のAシリーズ用カムは使用出来ない。8ポートヘッド用には2種類のカムシャフトが存在する。一つは燃料噴射型の場合に使用するC-AHT419であり、もう一つはウェーバー用のC-AEG599である。両方とも非常にワイルドなカムで、あの649カムよりさらにタイミングが早い。これらはBMC製のスプリント・カムやスーパースプリント・カムよりもさらにワイルドなのである。しかしリフト自体は649と全く同一であり、恐らくよりリフト効果の高いロッカーが使用されたのであろう。どういう競技種目においても、BMCはピストンのボア径を余り広げ過ぎないことを推奨している。TDCでせいぜい0.025"まで、或いはピストンがTDCで張り出している場合は0.050"までくらい。加えて、8ポートヘッドは通常と異なるバルブ開閉順のため、2番と4番のコンロッドがカムシャフトに干渉する可能性がある。そのためカムシャフトに衝突しないように、コンロッドの頂点のエッジとボルトの頭を多少研磨してやる必要がある!

これらのヘッドを実際に使用できるという幸運を得るためには、同時に非常に特別なパーツやキットに巡り会える必要があるのだ。しかも、今日のミニに使用されるシリンダーヘッドの設計の進化により、これらの風変わりな当時物から得られるアドバンテージは、非常に少ないと私は思う。それでも私はこれらのパーツを愛して止まない。もしこの鋳鉄製の8ポートヘッドに興味がある向きは、希望する詳細をお知らせいただければ私からクリスに伝えることはできる。

(以下省略)


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